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1.はじめに
(1)東京食肉市場全国肉用牛枝肉共励会は、全国で開催される枝肉共励会で規模が最も大きく、年1回しか開催されないものです。通常の共励会より高い販売単価がつけられます。また、この共励会で入賞するとネームバリューが上がり、しばらく、セリ業界で注目されます。そこで、生産者は高い値段をつけてもらおうと天塩にかけた牛を上場します。食肉卸業者は、全国から参集して、良質な枝肉を競り落とそうとします。
(2)食肉卸売業者・食肉加工業者にとっては、競り落とした枝肉の不需要部位(骨、脂など)が少なく、換言すれば肉の歩留が高く、消費者に「美味しい」と評価され、高い値段で買って貰うことが重要となります。
(3)そこで、流通の川上にあたる食肉卸売市場のセリ取引では、「美味しさ」の大きな指標であるBMS(ロース芯の脂肪交雑のグレード=筋肉内に細かな脂肪がたくさん分散、存在しているほど高い評価となる)、部分肉歩留(皮下脂肪など余分な脂が少なく、価値の高いロース芯が太いか否かを推定式で計算して歩留評価する)が良好なものが高い単価となります。
(4)高く取引されるか否かの指標であるBMS、ロース芯面積、枝重などは遺伝することがわかっています。そこで、肥育・繁殖の生産者は、食肉卸売市場で開催されるコンテスト(共励会、研究会など)の結果で、どの種雄牛のどの指標がどの程度優れたかという情報を集めています。同様に、食肉卸売業者も関心が高いということは、言うまでもありません。
(5)それぞれのBMS、ロース芯面積などの成績は、遺伝のほか農家の飼い方(飼料の与え方など)の影響(プラスもマイナスも)を受けることが知られています。プラスもマイナスもばらつくことから、できるだけ多い頭数をもとにした平均値で比較することが評価の正確さにつながります。たとえば、1、2回だけ好成績を出しただけでは、たまたまかもしれませんし、本来の遺伝形質は判然としないということになります。
2.比較上の留意点
成績には先述した環境要因注)が含まれるので、1頭あたりの最低上場頭数を設けて、環境要因を可能な限り圧縮しました。注)環境要因:遺伝要因以外で、飼料や気候などの要因です。データ数を増やすことにより、ある程度相殺できます。
3.結果
【和牛去勢牛】
(1)前回との比較

1年前と比較するとと比較すると、BMSが8.2%、枝重が1.3%も伸長していました。特に、BMSは驚異的でした。
(2)出品頭数(出品頭数:271頭)
出品頭数を10頭以上の種雄牛に限定し、比較しました。

出品頭数は、高成績ゆえの人気度の指標となっていると考えられます(そのほかの要因としては、系統の造成時期の新旧があります)。当団売上げトップのバランス(BMS,ロース芯面積、枝重)に優れた「福之姫」の構成比30.3%が圧倒的でした。以下№5は古くからBMSの優れた「美津照重」5.9%、№7はバランスのとれた「茂晴花」3.7%と続いていました。
(3)枝肉重量
販売金額=枝肉重量×枝肉単価 となるので、飼料費などの生産コストが上昇している現在では、重要な指標の一つとなります。なぜなら、昔から、肉質を高位安定化することより、枝肉重量を高位安定化することの方が、肥育農家には取り組み安いとされているからです。

当団の「福之姫」3位(平均対比101.8%)、「茂晴花」が6位(同98.6%)、「美津照重」が8位(同97.5%)となっていました。
(4)BMS

売上改善の枝重以外のもう一つ重要な要素であるロース芯の脂肪交雑で肉質の良さを表すBMSでは、当団の福之姫は№3の11.06、茂晴花は№4の11.00となっていました。
(5)ロース芯面積

ロース芯面積は、食肉卸売業者にとっても重要な指標となっています。枝肉の部位を比較すると、全て[ロース系(リブロース、サーロイン、ヒレ)以外では、バラ、モモなど]のうち、ロース系(一般的にはロイン系と称す)は、枝肉に対する重量比では14~15%(食肉学校資料)ですが、部分肉に分けて経済的価値を評価すると、ヒレが最も高く、次いでサーロイン、リブロース、となっており、モモは枝肉の単価より低くなります。そのため、食肉卸売業者が利ザヤを稼ぐ意味で、ロイン系の構成比が高いもの、すなわち、ロース芯面積が太いことが必要条件ですが、さらに、体型が寸詰まりで胴が丸みを帯びサーロインやヒレが太い「俵牛」の評価が高くなります。ちなみに、「寸詰まり」や「丸み」といった体型要素は、格付には表されず、共励会審査員は目視で確認し、大きな褒章決定要素ともなります。当団の「福之姫」「茂晴花」が上位に来ていました。
(6)販売金額
先述したとおり販売金額=枝肉単価×枝肉重量 ですが、枝肉単価に影響する要因では、BMS、ロース芯面積、歩留等級(枝肉重量に対する部分肉の割合で、72.0%以上をA等級、72.0%未満69.0%以上をB,69.0%未満をCに分類)のほか、日本食肉格付協会が評価する格付表には表れない「体型」「脂肪の質」や飼い方に関連する「産地(銘柄)」「飼養者(給与飼料、給与方法などに関連)」「種雄牛」などが程度の多少はありますが、関与するとされています。

バランスのとれた当団の「福之姫」が№1、「福之姫」ほど大型ではありませんが田尻系の「丸み」「寸詰まり」が特徴である「美津照重」が№2に、バランスの良い「茂晴花」が№5に来ていました。
(7)褒章割合

褒章は、荷受元等関係者が推奨する枝肉の指標表示として、共励会で最優秀賞、優秀賞などをつけるものです。当団の脂肪の質(オレイン酸割合のゲノミック育種価上位)や「丸み」「寸詰まり」体型の「美津照重」が№1、バランスの良い「茂晴花」が№2にトップバランスの「福之姫」№3と上位を占めています。見てわかるとおり、当団の種雄牛については単価との関連性が高いです。
(8)2代祖との相性(平均販売価格の降順)
少ない頭数ですが、5頭以上で比較しました。
父と二代祖との相性の参考(頭数が少ないと再現性は小さくなります)とします。

バランスを求めるなら美国桜、カブリの厚さなど迫力を求めるなら安福久の相性が良さそうです。
その他は、頭数が少なく、コメントできません。


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