牛の体脂肪の軟化・付着過多と肉締まりについて

枝肉見方・品質改善

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Ⅱ.脂肪付着過多

 枝肉評価では「筋間脂肪過多、カミ脂過多、背脂肪厚い」となります(写真2)。

1.原因

(1)素牛の過肥

 配合飼料中心に育て通常の素牛より筋間・皮下脂肪が発達している過肥の素牛は、通常の素牛と同じ飼い方をすると、仕上がりは脂肪付着過多となります。

(2)肥育中のムラ食い(摂取量が一定量でなく高低変動が激しい状況、以下同様)

 肥育の中期以降ドカ食いの反動で摂取量が減り基礎代謝量が減少した後に、再び摂取量が増えた時に脂肪付着が促進されるとされています。

(3)肥育前期での粗飼料・たん白質不足

 肥育前期で粗飼料不足、濃厚飼料過多で飼養すると、筋肉よりも筋間脂肪や皮下脂肪の発達が促進されます。特に、濃厚飼料のうち澱粉(穀類)が多く、たん白質(植物油粕等)が少ないと筋肉の発達が抑えられ脂肪付着が促進されます。

(4)血液中ビタミンAコントロール

 肥育中の血中ビタミンAが適切にコントロールされていないと(生後月齢13~18ヶ月で高い状況)、筋肉内での脂肪細胞分化(赤ちゃん脂肪細胞の誕生)が促進されないので、余剰エネルギーはロース芯をはじめとした筋肉内に入らず、既に脂肪細胞が形成されている筋肉外の筋間脂肪、カミ脂、皮下脂肪に付着(脂肪細胞の肥大化)していきます。

2.対応策

(1)肥育中のムラ食い

ア.配合飼料を給与する前に粗飼料を食べさせましょう。

イ.肥育中期で迎える濃厚飼料摂取量のピーク時までに、牛房(牛)別に飼料給与量を決めましょう。極端に飼料摂取量が増減しないように、毎日飼料摂取量を確認してビタミンA欠乏やルーメンアシドーシスなどの食い止まりの兆候が出たら症状に応じた対策を実施しましょう。

ウ. 飼料摂取量の変動を抑えるため、常に新鮮な水が飲めるよう水槽の汚染や凍結に留意しましょう。

(2)肥育前期での粗飼料・たん白質不足

ア.肥育前期では、筋肉(ロース芯、僧帽筋、広背筋等)を発達させるため、濃厚飼料多給とせず一定量の濃厚飼料に対し粗飼料をたっぷり与えましょう。これは、第一胃内微生物の活性化で重要なことです。また、「粗飼料多給」は、第一胃を拡充させ肥育中期以降の飼料摂取量を高位安定化のための必要条件です。

イ.発育遅延による骨格発達・肩の肉付き不良では、便の性状をみて軟便にならない範囲で、大豆粕などたん白質飼料を給与しましょう。

※牛の筋肉発達のための主な栄養素は、飼料たん白質ですが、直接吸収されるのではなく(バイパスたん白質を除く)、飼料たん白質が微生物に分解吸収されて、微生物体たん白質として、牛に吸収されます。充分な粗飼料を与えることによる微生物の活性化はこのような意味で重要です。

(3)血液中ビタミンAコントロール

ア.肥育中期は、脂肪が「筋肉内」で(サシ形成)していくように、月齢に合わせてビタミンAを適正値まで低下させ維持させる等、コントロールしましょう。

イ.素牛導入時のビタミンAが高めと想定される場合は、通常より前倒しにビタミンAを含まない濃厚飼料を給与したり、β-カロテンが少ない粗飼料を与えたりして低下のタイミングが遅れないようにしましょう。

(4)素牛の過肥抑制

濃厚飼料中心で粗飼料不足で育成された過肥の素牛を肥育する場合は、特に嗜好性の良い粗飼料を給与して牛に粗飼料を食べる習慣をつけさせましょう。そのようにして、通常の素牛より多い付着脂肪をさらに付、着させないようにしましょう。

コメント

  1. 竹脇靖弘 より:

    私は、主にメスの和牛肥育を50頭程行っている農家です。今回、脂肪が硬いと指摘を受けており改善するためにどんな内容の餌を給与したらよいのか検索していたところ、重要な解説で非常に興味深い内容を購読させていただきました。
    餌については、大麦の量が多いのではないかとアドバイスを受けて麦の量を減してみたのですが、一向に改善しません。下記に餌の内容の主なものを記しますので改善策があればご指導をお願いいたします。
                     記
    1.トウモロコシ圧ぺん  30%
    2.皮むき大麦圧ぺん   16
    3.専管ふすま      16
    4.大豆かす        8
    5.一般ふすま      10
    6.その他
    以前は、トウモロコシ、麦、専管は、ほぼ同じ割合でした。

    • トミさん より:

      竹脇様
      記事の閲覧ありがとうございます。
      さて、脂肪の固さについて確認させてください。
      (1)脂肪が固いと評価を受けている地域は、西日本ですか、東日本ですか。ざっくり言って西は柔らか志向、東はやや固め志向です。
      (2)脂肪が固いと評価されるのは、夏ですか冬ですか。1年中ですか。夏は柔らかめ、冬は固めになります。
      (3)症状はいつごろからですか。1年以上前からですか。濃厚飼料を変えてから効果が出始めるまで、最低半年はかかります。
      (4)種雄牛は何ですか。安福久などは脂肪が固くなります。
      以上のことを教えてください。それで、改善策を提案したいと思います。

  2. 竹脇靖弘 より:

    早速の返信ありがとうございます。
    (1)メスは名古屋の南部市場に出荷してます。買参人から指摘を受けました。
    (2)1年を通して硬いです。
    (3)1年以上前からです。
    (4)種雄牛は、宮崎県種雄牛です。安福久にはこだわってません。
    以上、返答します。よろしくお願いします。

    追 昨日メールした餌がメインなのですが、JAのモネシンの入った餌を3割程併用しております。とにかく、麦が硬くなるという認識があるので麦を減らしてるのが現状です。また、出荷の3か月前位からホミニーを添加すると軟くなるという情報を得て、ホミニーを10%程度添加してますが、かわりません。
    最近は、上物も簡単に出るようになり、さし重視から脂質も重要視するようになった傾向にあるのではないでしょうか。

    • 竹脇靖弘 より:

      名前はニックネームでもよろしいですか
      コメントは誰でも閲覧可能なのですか

      • トミさん より:

        ニックネームでも構いません。
        コメントは、ユーチューブのように、だれでも閲覧可能です。
        内容を秘密にしたい場合は、その旨を連絡してください。
        方法を考えます。

    • トミさん より:

      竹脇様
      (1)脂肪に固さは、濃厚飼料なら出荷前半年以前の給与切り替えしてから徐々にかわっていくこと、遺伝などの要因も絡み、濃厚飼料だけの急激な餌の変更は、おすすめしません。
      (2)そのような前提で、脂の柔らかさ追求は、融点(固体から液体に代わる温度、例えば氷⇒水は0°です)を下げることです。融点を下げる不飽和脂肪酸は植物種子の胚芽(将来、芽になる組織)に多く含まれます。
      (3)原料で言えば、生米ぬか、米粉、ホミニー(トウモロコロシ胚芽粉)などが代表的です。
      (4)留意点は、いずれの原料も、第一胃で急激に消化されやすいので、わらを十分与えること等、ルーメンアシドーシスにならないようにすることです。目安で言えば、5~10%。ルーメンアシドーシスは下痢軟便になります。
      (5)種雄牛の選定も効果があります。家畜改良事業団のHPをご覧ください。https://liaj.lin.gr.jp/beef/profile?profile=p%e9%bb%921061

  3. まーくん より:

    ご教授ありがとうございます。今までは3か月を目安に添加してましたので、出荷半年前えから添加を試みてみます。
    それからもう1点なのですが、現状は質はもとより量を取らないと経営的に厳しい状況です。メスは濃厚飼料の給与量のコントロールで皮下脂肪がつき易いと思いますが、どういった点を気を付けたらよいのでしょうか。

    • トミさん より:

      まーくん
      まず、記事「去勢と牝の飼い方の違いについて」で基本的な事項を覚えてください。
      もう一歩突っ込むためには、記事「枝肉重量の大型化について」を読んでください。
      読む順番を逆にしないようにしてください。※平均枝肉重量が450とれているのであれば、後者から読んでも結構です。
      最終的なポイントは肉質等級と枝肉重量の両立です。

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