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Ⅲ.肉締まり不足
1.肉締まり不足の性状
筋肉内のサシ以外の赤身の部分も、脂肪が含まれています。様々な要因でその含有率が少なくなると、枝肉の切開面に懐中電灯を当てた場合、光の透過率が高くなり、筋肉表面の色は濃く(暗黒褐色)なります。さらに、表面には筋肉内の微量の水分が浸み出し、サシ部分(脂肪細胞)と赤身(筋肉細胞)に段差が生じて凸凹の粗い表面性状となり、枝肉評価では「肉締まりが悪い、肉締まり不足」の枝肉となります(写真3)。肉締まりが極端に悪いと、コンシューマーパックでのドリップを引き起こし、日持ちが悪くなるとされています。
肉締まりの悪化は、各ステージ・各筋肉で異なり、肥育前期~中期では胸腹鋸筋、肥育中期ではロース芯、肥育後期では僧帽筋、広背筋で影響を受けると考えられます。
2.原因
(1)飼料
前述の米ぬか等不飽和脂肪酸(オレイン酸など)を多く含む配合飼料を多給すると、筋肉内脂肪の融点が下がりすぎて、肉締まりが悪くなります。
(2)肥育後半の栄養不足
肥育中盤までの筋肉形成後、食い止まりや給与量不足等での給与エネルギー不足により、筋肉内の脂肪の蓄積量が不足すると、肉締まりが悪くなります。
エネルギー不足は、前述したエネルギー摂取不足のほか、代謝過程での肝機能低下でも起こることが考えられます。それは、ストレス(血中ビタミンAの低下、ルーメンアシドーシスによるエンドトキシン)により肝臓に負担が過度にかかり、エネルギー代謝が低下するためと考えられ、血中成分の総コレステロール値の低迷などの症状にも表れてきます。
(3)ビタミンAコントロールの失宜
血中ビタミンAコントロールが失敗することにより(例:肥育中盤の血中ビタミンAが高位)、筋肉内の脂肪の蓄積量が不足すると、肉締まりが悪くなります。
(4)環境温度・体感温度
冬季の体感温度の低下は、前述のとおり体内脂肪の融点を低下させます。特に、5℃以下では、維持エネルギー要求量が増大します(例:18~25℃に対し5~0℃は30~40%増)。そして、飼料を増給できないので、結果としてエネルギー不足となり肉締まりが悪くなります。
(5)ストレス
地震、害虫(サシバエ等)、騒音などの驚愕、敷料泥濘化の佇立行為の増加、房内闘争(突き合い)の激化、寄生虫(ノミ、シラミ)などのストレスは、平穏な休息でのエネルギー蓄積を妨げアドレナリン(興奮時に分泌される体内ホルモン)の分泌を促進します。このため、せっかく蓄積された脂肪が分解されて肉締まりが悪くなります。
3.対応策
(1)飼料
軟脂対策に準じます。
(2)肥育後半の栄養不足
軟脂対策に準じます。
(3)肝炎発生抑制
獣医師の指導の下、血中ビタミンAが低下する時期とルーメンアシドーシスが頻発する時期に強肝剤を適宜投与します。
例)16・23ヶ月齢 ウルソ5%製剤50g/日×3日
(4)ビタミンAコントロールの失宜
脂肪付着過多対策に準じます。
あわせて、(2)の栄養不足の要因のひとつであるビタミンA欠乏症の解消と筋肉内の脂肪細胞の増大を目的に仕上期(おおむね23ヶ月齢以降)に積極的なビタミンA投与を実施しましょう。
※積極的なビタミンA投与時期は、従来は25ヶ月齢以降とされていましたが、最近の試験例・現場での実例では、増体系の台頭のためか23ヶ月齢以降とする事例が増えています。
(5)環境温度・体感温度
軟脂対策に準じます。
(6)ストレス
地震を除き完全ではないにしろストレッサーを除去することは可能であるので、除去に心掛けましょう。
例)駆虫、敷料交換励行、除角
参考
入江正和、<総説>和牛肉における脂肪質と食味性、日本畜産学会報92 (1), 1-16, 2021
Cramer.D.Aら、J.Animal Sci,23,1002,1964
坂下ら(2001)黒毛和種去勢牛の枝肉における皮下脂肪、筋間脂肪および体腔脂肪の蓄積に及ぼす影響、西日本畜産学会報、p51-54
冨谷尚博、冬場の肉牛戦略、LIAJ News191・肉用牛関連情報、16-18、2021
横田 祥子ら、黒毛和種牛肉における脂肪酸組成と枝肉形質および肉質形質との遺伝的関係、東北畜産学会報 60(3):80 ~85 、2011
小林正人、庄司則章、黒毛和牛の脂肪の質、東北畜産学会報60(3):65~73,2021
佐々木康之ら、反芻動物の栄養生理学、385-386農山漁村文化協会、1998
冨谷尚博、飼い直しについて、LIAJ NEWS190,家畜改良事業団、10-12,2021


コメント
私は、主にメスの和牛肥育を50頭程行っている農家です。今回、脂肪が硬いと指摘を受けており改善するためにどんな内容の餌を給与したらよいのか検索していたところ、重要な解説で非常に興味深い内容を購読させていただきました。
餌については、大麦の量が多いのではないかとアドバイスを受けて麦の量を減してみたのですが、一向に改善しません。下記に餌の内容の主なものを記しますので改善策があればご指導をお願いいたします。
記
1.トウモロコシ圧ぺん 30%
2.皮むき大麦圧ぺん 16
3.専管ふすま 16
4.大豆かす 8
5.一般ふすま 10
6.その他
以前は、トウモロコシ、麦、専管は、ほぼ同じ割合でした。
竹脇様
記事の閲覧ありがとうございます。
さて、脂肪の固さについて確認させてください。
(1)脂肪が固いと評価を受けている地域は、西日本ですか、東日本ですか。ざっくり言って西は柔らか志向、東はやや固め志向です。
(2)脂肪が固いと評価されるのは、夏ですか冬ですか。1年中ですか。夏は柔らかめ、冬は固めになります。
(3)症状はいつごろからですか。1年以上前からですか。濃厚飼料を変えてから効果が出始めるまで、最低半年はかかります。
(4)種雄牛は何ですか。安福久などは脂肪が固くなります。
以上のことを教えてください。それで、改善策を提案したいと思います。
早速の返信ありがとうございます。
(1)メスは名古屋の南部市場に出荷してます。買参人から指摘を受けました。
(2)1年を通して硬いです。
(3)1年以上前からです。
(4)種雄牛は、宮崎県種雄牛です。安福久にはこだわってません。
以上、返答します。よろしくお願いします。
追 昨日メールした餌がメインなのですが、JAのモネシンの入った餌を3割程併用しております。とにかく、麦が硬くなるという認識があるので麦を減らしてるのが現状です。また、出荷の3か月前位からホミニーを添加すると軟くなるという情報を得て、ホミニーを10%程度添加してますが、かわりません。
最近は、上物も簡単に出るようになり、さし重視から脂質も重要視するようになった傾向にあるのではないでしょうか。
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方法を考えます。
竹脇様
(1)脂肪に固さは、濃厚飼料なら出荷前半年以前の給与切り替えしてから徐々にかわっていくこと、遺伝などの要因も絡み、濃厚飼料だけの急激な餌の変更は、おすすめしません。
(2)そのような前提で、脂の柔らかさ追求は、融点(固体から液体に代わる温度、例えば氷⇒水は0°です)を下げることです。融点を下げる不飽和脂肪酸は植物種子の胚芽(将来、芽になる組織)に多く含まれます。
(3)原料で言えば、生米ぬか、米粉、ホミニー(トウモロコロシ胚芽粉)などが代表的です。
(4)留意点は、いずれの原料も、第一胃で急激に消化されやすいので、わらを十分与えること等、ルーメンアシドーシスにならないようにすることです。目安で言えば、5~10%。ルーメンアシドーシスは下痢軟便になります。
(5)種雄牛の選定も効果があります。家畜改良事業団のHPをご覧ください。https://liaj.lin.gr.jp/beef/profile?profile=p%e9%bb%921061
ご教授ありがとうございます。今までは3か月を目安に添加してましたので、出荷半年前えから添加を試みてみます。
それからもう1点なのですが、現状は質はもとより量を取らないと経営的に厳しい状況です。メスは濃厚飼料の給与量のコントロールで皮下脂肪がつき易いと思いますが、どういった点を気を付けたらよいのでしょうか。
まーくん
まず、記事「去勢と牝の飼い方の違いについて」で基本的な事項を覚えてください。
もう一歩突っ込むためには、記事「枝肉重量の大型化について」を読んでください。
読む順番を逆にしないようにしてください。※平均枝肉重量が450とれているのであれば、後者から読んでも結構です。
最終的なポイントは肉質等級と枝肉重量の両立です。